返済猶予中の債務を正常化する方法とは

企業において、過去の投資の失敗や業績が振るわずにふくらんでしまった借入金は、約定通り返済しようとするととても大変です。ビジネスの収支以上に返済負担が大きい場合で、赤字が続いている企業は再調達もだんだん厳しくなっていきます。このような状況下では、金融機関に返済猶予、いわゆるリスケジュールをお願いするケースも多くなります。

 

ただし、リスケ中は新規借入ができなくなるため、手持ち資金で資金を回さなければなりません。したがって、経営改善に真剣に取り組んで黒字化させることがこの段階の最優先事項となります。

 

やがて順調に業績が回復してくると経営者も前向きになり、新しいチャレンジをしたいという気持ちも出てきますが、そこでリスケ状態が足かせとなってしまいます。

 

一方、金融機関側も返済猶予債権というのは貸倒リスクをはらんだ債権ということで、担保でカバーされていない部分に関しては貸倒引当金を8割ぐらい積み立てなければなりません。これは金融機関の決算上コストになるため利益を圧迫することになります。

 

黒字化のメドがついたら、企業、金融機関双方の利害が一致する「返済猶予中の債務の正常化」を目指すべきでしょう。

 

 

その具体的な方法とはどのようなものでしょうか。率直に申し上げるとケースバイケースということになってしまいますが、多くの中小企業が利用している信用保証協会付きの債務が借入金全体に占める割合が高いケースを前提に話を進めます。

 

1.信用保証協会に借り換えを打診する

メイン取引の金融機関を通じて、信用保証協会に借り換えができないか打診します。直近決算のキャッシュフローを計算基礎として、最長15年の借入金に借り換えた場合に返済能力があるとみなされるかどうかがポイントになります。

 

(返済能力を判定する計算例)

借入金残高100百万円 キャッシュフロー8百万円 借り入れ期間15年 の場合

借り換え金額100百万÷借入期間15年 ≒ 年間返済額7百万円  <  キャッシュフロー8百万円

 

このケースでは年間返済額をキャッシュフローが上回るため、検討のテーブルに乗せてもらえる可能性があるということになります。

 

2.メイン金融機関のプロパー借り換えを打診する

メイン金融機関にプロパー融資がある場合は、信用保証協会と同条件で借り換えができないか打診します。

 

3.サブ以下の金融機関に借り換えを打診する

メインの借り換え内諾を得たら、サブ以下にも相談します。

 

4.正式な借り換え依頼とバンクミーティング

すべての金融機関から内諾が得られたら正式な借り換えの手続きに入ります。

金融機関数が多く、持ち回りだと調整が難しいと判断する場合はメインもしくは信用保証協会主導によるバンクミーティングを開催します。

 

5.借り換え実行による正常化

すべての債務を借り換えることができれば、晴れて「正常化」ということになります。

正常化したらすぐに資金調達ができるかどうかは、ケースバイケースです。

「次の決算が出るまで様子を見させてください」や、「事業計画を確認させてください」など金融機関からオーダーが出るかもしれません。

また、信用保証協会が借り換えに利用する「制度」によって制約されることもあるようです。

 

できれば、借り換え打診とセットで具体的な案件の資金調達を相談しておくことをお勧めします。

 

景気が安定している今が正常化のチャンスです!ぜひ検討してみてください。