優れた起業家の行動「エフェクチュエーション」とは

大学で現代産業論(起業論)というものを担当しています。

優れた起業家の行動を分析し、一定のパターンがあることを発見し、それを体系化した「エフェクチュエーション」という理論があります。

優れた起業家は、一般的なマーケティング戦略の体系として教えられているように、市場を調査し、セグメント分けをしてターゲティングし、ポジショニングをとるという一連のプロセスを経てから顧客を探す行動に出るのではなく、とにかく自分が今とりうる手段を活用して最初の顧客を選択するようです。

つまり、自分は誰なのか、自分は何を知っているのか、自分は誰を知っているのか、ということを起点に、資源を洗い出す⇒行動する⇒他者と繋がることで相互作用が働き新たなものを生み出すというプロセスで顧客を創造します。

これは毎年担当している「とうしゅん創業塾」という創業者向けのセミナーでお伝えしてきたことと一致します。

創業者は、自分が経験してきた仕事や、とても深く掘り下げた物事を武器にするしかなく、そしてニーズのことは顧客となる候補にしかわからないから、とにかくたくさんの人と会ってビジネスアイデアをブラッシュアップしようと、毎回言っています。

「子育てママが気軽に立ち寄れるカフェ」とか、「これからは農業だから有機野菜を作ってマルシェで販売する」というようななんとなくできたら良いなというテーマで脱サラしようという話をよく聞きますが、それらはご自身のどこの経験や知識を活かして、具体的に誰のニーズを満たすものなのか、よく考え、よく動いて有用な情報を獲得する必要があります。

もちろん、経験がなくてもうまくいくパターンもありますが、ビジネスを維持していける確率は低くなると思います。

自分の経験も踏まえると、やはり自分が経験してきたことは顧客に喜んでもらえますし、満足度が高いと実感します。

そして、自分が使える武器をどこで使うのかを知っているのは他人ということになるので、とにかく人と会う。自分にとって有益な情報は他人しか持っていないと確信しています。

 

生物学者の福岡伸一さんは、「自分探しは、自分の中で探しても見つからない。他者との関係の中でこそ、自分を見つける事が出来る」と言っています。

また、細胞について「一つの細胞は、他の細胞との関係を保って存在する。自己を主張せず、他との協調で自分の役割を果たす。しかし、それをしない細胞がある。それはガン細胞なんです」と語っています。

ビジネスも相手があることで成立するものですよね。

それは顧客に限らず、顧客を取り巻くビジネスパートナーとの関係も大切であり、それら他者との関係を保ちながら自社のビジネスがあると考えるべきなのだと思います。

それができずに、ただ単に自分がやりたいことをやろうとして独りよがりになるのは、がん細胞と一緒で周りの環境を壊していって自滅することになるのでしょう。

ビジネスは人との関係で成立する!

「人付き合いは大変な面もあるけれど、それがうまくできるようになること自体がビジネスを加速させるんだよな」

せっかく起業したからには、自分が好きな人だけとつきあいながら仕事したいよ!という願望もあるでしょうし、それも可能だと思います。

商売が軌道に乗るまでは人と会いまくって多動を貫き、自分のビジネス環境が整った段階にまで持っていければ、誰と付き合おうと構わないのではないでしょうか。

その前から好き嫌いを言っているのはただの「わがまま」ですよね。