パソコンのフォルダ整理のすすめ

― 情報の整理は思考の整理 ―

はじめに:気づけば“デスクトップ地獄”

仕事をしていて、こんな経験はありませんか?
目的のファイルを探しているのに、どこに保存したのか思い出せない。
気づけばデスクトップ一面がファイルで埋め尽くされ、「どれが最新版かわからない」という状態。

実は、私が最も良くないと思っているのが、デスクトップにファイルを直接貼り付けるタイプのPCです。
デスクトップは一時保管場所に過ぎません。そこにすべてを置いてしまうと、作業の都度ファイルが散らかり、思考まで散らかってしまうのです。

でも、誰もが最初はそうでした。
私自身も昔は“とりあえずデスクトップ”派。
しかし、ある時ふと「フォルダの構造は頭の中の構造そのものだ」と気づき、それ以来、情報整理のあり方を見直しました。


現場で感じた「整理できない」悩み

先日、名古屋商工会議所で「モノと情報の整理・時短仕事術講座」というセミナーを行いました。
このテーマは、書類やデータの整理を通して仕事のムダを減らし、生産性を上げることを目的にしたものです。

参加者の皆さんとディスカッションをしている中で、やはり多くの方からこんな声が上がりました。

「どんどんファイルが増えて、整理が追いつかない」
「フォルダを作っても、結局どこに入れたか分からなくなる」
「似たような名前のファイルがいっぱいある」

どれも共感できる悩みです。
特に、営業事務の方からは「見積書の最新版が分からない」「以前のデータを探すのに毎回10分以上かかる」といった切実な声も。
ファイル整理は、“やろうと思っても後回しになる代表格”なんですよね。


気づき:いきなり階層構造を作ろうとしない

そんなディスカッションの中で、私が改めて感じたのは――

フォルダ整理は構造から入ると失敗する。名前のルールから始めるとうまくいく。

多くの方が、いきなりフォルダ階層をどう作るかを考えてしまいます。
でも、それは建物で言えば“間取り”を決める前に“家具の配置”を考えているようなものです。

まず大事なのは、ファイル名のルールを統一すること
これだけで整理の方向性が自然に見えてきます。

たとえば、次のようにファイル名を統一してみましょう。

【日付】【プロジェクト名】【内容】.docx
例:20241113_商品企画会議_議事録.docx

このルールを守るだけで、検索結果の一覧を見ただけで内容がわかるようになります。
そして不思議なことに、ルールを決めて運用しているうちに、
「この種類のファイルは別フォルダにまとめた方が良さそうだ」
という自然な構造化の発想が生まれてくるのです。

これは、情報整理の世界でいう“構造化思考”とまったく同じプロセス。
フォルダ整理とは、頭の中を整理する行為そのものなのです。


実践編:4つのシンプルなステップ

では、具体的にどうすればいいのでしょうか。
難しいルールは不要です。次の4つのステップだけで十分整理が進みます。

① 用途ごとに大分類を作る

まずは「仕事用」「個人用」「プロジェクト別」といった用途ごとの大分類フォルダを作りましょう。
迷ったら「自分が検索する時にどう探すか」を想像して決めるのがコツです。

② 日付やバージョンでサブフォルダを整理

大分類の中では、年月やバージョンごとに分けてみましょう。
たとえば「2024年」「2025年」あるいは「v1.0」「v2.0」など。
履歴が追いやすく、同じプロジェクトの過去資料もすぐにたどれます。

③ ファイル名にルールを決める

前述のように、ファイル名は最も重要な整理要素です。
「誰が見ても一目で分かる」名前を意識してください。
日付を入れることで時系列が整理され、プロジェクト名を入れることで検索性が上がります。

④ 定期的に見直す

フォルダ構成は一度決めて終わりではありません。
新しいプロジェクトが増えたり、使わなくなったフォルダが出てきたりします。
3か月に一度は“棚卸し”を行うつもりで、不要なファイルを削除・統合する習慣をつけましょう。
整理は一度の大掃除ではなく、定期的なメンテナンスが鍵です。


現場のエピソード:ルールがチームを救う

セミナーで印象的だったのが、ある営業事務の方のエピソードです。

営業担当から「以前の見積もりファイルを探してほしい」と頼まれても、どこに保存したか思い出せず、
毎回10分、15分と探す時間がかかっていたそうです。

その方はセミナー後、チームでファイル名ルールを共有しました。
「【顧客名】【日付】【内容】」と決め、全員が同じ形式で保存するようにしたところ、
1週間も経たないうちに“探す時間がゼロになった”とのこと。

「ルールを決めたら、自分もチームもイライラしなくなりました」

この変化は、ファイル整理という小さな改善が職場全体の心理的余裕を生むことを物語っています。


整理とは「仕組み」でなく「習慣」

整理術の目的は、“きれいに並べること”ではありません。
本当の目的は、必要な情報を最短で取り出せる状態にしておくことです。

整理ができていない職場ほど、「あのファイルどこ?」「誰が持ってる?」という会話が多く、思考の流れが何度も途切れます。
逆に、整理が行き届いた職場は意思決定が速く、余計なストレスがありません。

フォルダ整理は、情報の交通整理。
フォルダ構造は、組織の思考構造そのものと言っても過言ではありません。


結び:整理は“未来の自分への投資”

フォルダ整理は面倒に思えるかもしれません。
しかし、将来の自分が「助かった」と思える瞬間が必ずやってきます。

忙しい今こそ、未来の自分のために環境を整える。
それは時間の節約だけでなく、思考のクリアさチームの信頼を生み出します。

パソコンの整理は、頭の中の整理。
今日1つでもフォルダを見直すことから始めてみませんか。


✅ まとめ

  • デスクトップに直接保存しない。

  • フォルダは「用途」「年月」「バージョン」で階層化。

  • ファイル名はルール化。「日付+プロジェクト名+内容」が鉄則。

  • 3か月ごとに見直し、“情報の棚卸し”を。

整理とは、未来の自分を助ける習慣である。