知らないと損する 決算書の読み方 ROA分析編
わたしが財務分析でよく使うのはROA:総資本利益率で、次の式に決算書から該当する数字を代入して計算します。
ROA(営業利益/総資本)=総資本回転率(売上高/総資本)× 売上高営業利益率(営業利益/売上高)
たとえば外食チェーン大手2社のROAを分析してみます。
吉野家のROAは2020年度に-4.0%になってしまいましたが、マクドナルドは13.4%と2016年度の3.8%から大きく改善していることがわかります。
次に、この2社の違いを引き起こしているのがBS要因なのか、PL要因なのかについて分析します。
総資本回転率は、総資本(BS)を使って、どれだけの売上(PL)を作ったのかを表しており、資本の効率を見る指標です。
マクドナルドの総資本回転率は1.24〜1.30回の間でほとんど変化がないのに対し、吉野家は1.64〜1.80回の水準だったものが2020年だけ1.29回と効率が下がっています。
吉野家の総資産額は2020年度は前年度比+3%程度と大きく変化していないのに対して、売上高は△21%と大きく落ち込んでいます。
したがって、この段階でPLの方に問題がありそうだなというあたりがつきます。
さらに、売上高営業利益率を見てみます。
この売上高営業利益率のグラフと、最初のROAのグラフを見比べてみるとほとんど同じ形になっていることがわかります。
したがって、ROAを変化させた要因はほぼ売上高営業利益率の方にあるといえます(最初から見せろって?)。
マクドナルドは、2014年に発覚したチキンマックナゲットの鶏肉賞味期限切れ問題を端緒として、業績が悪化しました。
しかし、その後不採算店の閉鎖、店舗のクリンリネス改善ほかさまざまな取り組みで業績を回復させてきました。
数年前からモバイルオーダーの仕組みを確立してきたことで、最近のマック店頭では、店頭で注文しようと並んでいる人より数倍の注文をこなすために、スタッフが超多忙に作業をしている様子が見えます。
コロナ禍で店内飲食が避けられる状況が逆にプラスに働いた結果、業績はさらに改善したと言えるのでしょう。
一方の吉野家はもともと24時間営業での薄利多売ビジネスモデルだったところに、緊急事態宣言下の営業時間短縮要請などの影響で売上高が2割落ち込んでしまい、店舗の家賃などの固定費をカバーしきれずに赤字転落となってしまったということなのでしょう(吉野家も最近になってモバイルオーダーを始めていますが、テイクアウトのみとなっています)。
以上のように、ROAの分析をきっかけとして、2社のビジネスモデルの違いや、それがコロナ禍でどのように影響したのかなどについて分析を進めることができたということをご理解いただけたのではないでしょうか。
財務分析するなら、まずROAに着目して、時系列と比較対象を用いて分析しろ!