暗黙知を形式知にすることは可能か?

毎年、さまざまな会社で「ベテランが若手に仕事を教えるためのスキル」を身につける研修会を実施しています。

製造現場では、新人を早く育てられるように、ベテランが無意識でやっている作業を有意識化するための「作業分解」と、言って聞かせ、やって見せ、書いてみせ、急所を強調して丁寧に指導する「教え方の4段階」というスキルを中心に、徹底的にトレーニングして身につける研修会を実施します。

技術職場では、ベテラン社員が経験から蓄積してきた業務遂行のための暗黙知の発生プロセスを探りながら、あるメソッドに沿って具体的に業務を分析して形式知に変えるセミナーを担当します。とくに間接職場で取り扱う暗黙知は、考えられる選択肢の中からそのケースに合ったものを選ぶ「判断の仕方」のように、経験値があるベテランならではの業務を対象としています。

暗黙知の分析演習をやっていると、ベテラン業務のかなりの部分は形式知に置き換えることが可能なのではないかと感じます。

つまり、ベテラン本人が自分の知識を使って「この目的を果たすには、この手段が必要で、そなためには…」と業務をロジカルに整理していくと、キーとなる業務が見えて来て、そこをさらに深掘りしていくと、「あー最初にこれから教えればいいんだ!」という答えにたどり着くことが多いからです。

自分が暗黙知と思っていることでも、大半のことは形式知化できる!

「そんな難しい仕事してるわけじゃないよねー」

本当に感覚的にやっている業務については、また別の方法での伝え方も紹介しています。

全ての前提として、教える側と、教えられる側が同じ空間、時間で仕事をしながら身体的、感情的なものも共有できる環境をつくること、両者に信頼関係があること、教えられる側が素直に指導を受け止める意識があることなどが必要になります。