部下に難しい仕事を乗り越えさせる指導法とは
中堅・ベテラン社員が無意識にできている仕事の勘やコツをどのように部下や後輩に伝えれば良いのかを考えるセミナーを実施しました。
現在取り組んでいる仕事に精通し、複雑な設計や、精密な設備のトラブルへの対応などができるようになった「熟達のプロセス」を振り返ると、上司や先輩に鍛えられたというコメントが多数聞かれました。
具体的には、自分が考えた結論やアウトプットを上司にぶつけてみると、抜けている視点や自分にはない新しい考え方のフィードバックをもらえて、その繰り返しを通じて知識やノウハウを自分の中に蓄積することができたという事例や、上司から知識を体系的に習得するため専門分野の資格取得を勧められ、自分も一生懸命勉強するのと並行してトライアンドエラーで仕事に取り組ませてもらうことで、達成感や仕事の面白みを感じさせてもらったなどのワクワクするような体験談をうかがうことができました。
すでにノウハウを持っている上司や先輩と時間や空間を共にしながら、仕事を媒介として相互にやりとりすることを通じて、暗黙知と呼ばれるものが伝承される様子が浮かび上がってきます。
また、先人が残した資料を見ながら、なぜその人はそう考えたのかを自問することで原理原則の引き出しを増やしていったという事例からは、自分が体験した仕事の経緯や結果を記録して残しておくことで、後進にノウハウをしっかりと伝えることにつながるものなのだと思います。
わたしも、銀行員時代には厳しい上司から何度も稟議書を突き返されるプロセスを通じて、案件構築に必要な情報とは何か、ロジカルな文書の構成とはどのようなものかなどを学びながら、その上司とのやりとりが成長につながったという記憶があります。
また、稟議ファイルなる顧客別の資料に記録された「特記事項」という手書きの資料を熟読し、その企業との融資の採り上げ経緯や、トラブル時の対応とその結果、経営者の特性や企業の歴史などを把握しながら、自分なりの取引スタンスを醸成していました。
暗黙知の伝承には、上司との壁打ちや仕事の記録が役にたつ!
もちろん、仕事を覚える側が上司等からのフィードバックを参考に、あらたな視点を取り入れて、自分で考えて結論を出していくという心構えや実践が前提となるわけで、上司側としては部下育成の観点から、そのように仕向けるというOJTやリーダシップのスキルも必要になりますね。