リスケの意味とリスケ後やるべきことを考える

リスケの意味

金融機関からの借入金には返済条件がついています。たとえば毎月末日に元金100,000円と、1ヶ月分の利息前払いをするといったものです。リスケ(リスケジュールの略)という言葉の意味としては、金融の世界ではこの「借入金の当初の返済条件を変更すること」になります。会議のスケジュールを変更したりするときの「リスケする」という意味とは違いますので、念のため。

借入時点で想定していた利益を確保することができなくなると、返済資金に回せるお金が不足します。リスケをせずに無理に返済を進めてしまうと手元現金が減って今度は仕入先・外注先や給料の支払いができなくなってしまいます。これらの支払いが滞るとたちまち商売の運営に支障を来すことになるので、絶対に避けなければなりません。

こうなってくると、社会保険料や消費税の支払いを止めてしまうこともありますが、社会保険料は毎月の支払いがありますし、消費税でも数ヶ月ごとに支払いが発生するため、ここに救いを求めると雪だるま式に未払い分が溜まってしまいます。企業規模にもよりますが、あっというまに数千万円の負債が積み上がるものです。しかも当然支払い義務は残るため、あとで相当苦労することになるため、できるかぎり正常に支払いを続ける努力をするべきです。

一方で、金融機関は基本的にはリスケの相談に乗ってくれるものなので、なんらかの支払いの繰延べが必要になりそうだとわかったときには、真っ先に金融機関担当者に話すべきです。

リスケの依頼方法

リスケを依頼する際には、あらかじめ次のこと、ものを準備すると良いでしょう。

  1. 返済を猶予したい金額をはっきりさせる
  2. 向こう3ヶ月程度の資金繰り予定表
  3. 直近の試算表

まず、毎月返済している元金の総額を金融機関ごとに書き出します。今月、来月、再来月の現金の収支、すなわち資金繰りをつかむために、3ヶ月程度の資金繰り予定表を作って、当面不足する金額を計算することで、返済猶予が必要な金額がはっきりとしてきます。

資金繰り予定表なんて作ったことがないよ!という方は、こちらのサイトをご参照ください。https://j-net21.smrj.go.jp/qa/financial/Q0225.html 資金繰り予定表で把握すべきポイントは、商売上の収支すなわち売上金の回収等と、買掛金や人件費、諸経費の支払いの差額でいくら現金が残るかを計算し、その範囲内で借入金の返済が可能かどうかという点です。商売上の収支で借入金の返済を賄えない場合は、リスケをしなければ資金が回らないという判断になります。

商売上の収支が少額もしくはマイナスということは、利益が出ていないということなので試算表でそのことを確認します。

数日後の借入金返済の引き落としをしてしまうと手形が落ちないなどという緊急事態であれば、上記にこだわらずにとにかく急いでリスケを依頼してください。金融機関側も取り急ぎの対応をしてくれるはずです。

リスケをしたら、新たな借入をすることができなくなります。本来は、返済を止めたら手元にある資金で当面は回るという手元資金量になるタイミングを考えて依頼すべきです。

リスケ後にやるべきこと

リスケをしてしまうと、あんなに月末の資金繰りがしんどかったのがウソのようだと落ち着くことができるでしょう。これで経営者の方は資金繰りに奔走するのではなく、本来の経営の仕事ができることになります。

しかし、永久にリスケを継続するわけにはいかないです。金融機関には最初の約定を反故にして迷惑をかけている状態ですし、企業側としても借入金による将来の事業投資ができない状態になっているわけなので、早急に経営の改善に着手することが求められます。

そもそも資金不足に陥った原因は何なのか?その原因をつぶしてとにかく利益を確保するための対策を実行します。

金融機関からは、改善計画の提出を求められることがあります。その内容は単なる数字の羅列では意味がなく、抜本的に収益性を改善するための対策をとることが明記されており、誰がみても納得がいくものでなければなりません。

私が見てきた経営悪化の原因は次のようなものが多かったです。

  1. 収益性が低い業務に偏っているため固定費を賄えていない
  2. 経営幹部や社員に業務を任せきりで経営者が重要な判断に関与していない
  3. 経営者が対外的な活動にかまけている
  4. 拡大路線で借入して投資した資金が回収できていない
  5. 経営者がお金の流れを見ていないため不正が起こっている

他にもありますが、これらの原因が複数に絡み合い影響しあうことで赤字が発生しているケースが多いと感じます。共通しているのは経営者が社内の動きと数字をしっかり見ていないことで、異常に気づけていないということです。

逆に言えば、社内の動きと数字をしっかり見ることを始めれば、問題が次々と見つかり、その原因を特定することができるようになるため、必ず収益性は改善すると言えるのです。

リスケから正常化へ

最近では、信用保証協会の借替保証という制度が整備された流れを受けて、リスケ状態から返済正常化のスキームができています。具体的な考え方についてはこちらの記事を参照してください。https://f-manage.com/事業再生コンサルティング/561/

収益性の改善の効果が、試算表や決算書上の営業利益、経常利益、当期純利益がプラスになっているという結果にあらわれ、それが定着しつつあるという段階で返済正常化の検討を始めましょう。

正常化のタイミングは焦らず、この金額なら返済できそうだという感覚を持つことができたら金融機関に相談しましょう。

返済正常化のためには、あらためて改善計画の提出が求められます。計画のメインは返済計画とそのための利益計画になります。「この計画ならこの程度の返済はいけるよね」と関係者が納得できればOKということです。

まとめ

資金繰りが厳しくなったら、すぐに金融機関に相談しましょう。借入でしのぐこともできますが、商売上の利益が出ていないと資金調達がままならなくなります。そんなときは、他の支払いを止めるのではなく、リスケを依頼しましょう。

リスケしたらやれやれと安心してしまうのではなく、即刻収益改善に取り組みます。収益性が改善すれば返済正常化することは可能です。実際に正常化してあらためて将来の投資をしたり、社員に賞与を出したりと前向きな取り組みができている企業はたくさんあります。リスケを機に、会社を生まれ変わらせましょう。