知らないと損する決算書の読み方のコツ 貸借対照表編

決算書をじっくりと見る機会に恵まれた方は少ないのではないでしょうか。必然的に決算書を見てもどうやって分析すれば良いかわからない、良いのか悪いのかどこで判断したらいいのか全く見当もつかないというのが本音のところだと思います。

財務分析のセミナーや研修を担当させていただくと、このテーマほど受講時点での決算書に対する理解度の差が講義運営に影響を与えるものはないと、いつも感じます。

毎回どの理解度の方に照準を合わせて、どのレベルから説明すれば良いのか迷ってしまいます。決算書など見たことがほとんどないという方に合わせると、経験者にはもどかしい内容になってしまいますし、少しでもレベルを上げてしまうと初学者の方はたちまちついてこられなくなってしまいます。

そこで、いつも私は決算書の科目や、仕訳、借方・貸方などの簿記の用語を極力使わずに企業のビジネス活動と決算書の関係をつかんでもらえるような説明をす心がけています。単なる数字が並んでいる書類から、「なんだ、そんな構造になってたんだ。だったらここと、ここを見れば全体像がつかめるな。」とイメージしていただけたら嬉しいと思っています。

ここからは、本来は板書をしながら図を交えて説明するため文章だけだとわかりづらいかと思いますが、いつもお話しするように説明してみますので、ためしに読んでみてください。

貸借対照表の右側は資金をどうやって用立ててきたのか左側にはその資金をどうやって使っているのかが書かれています。右が資金調達左が資金運用になります。運用というと、預金や投資信託でお金を運用するというような投資用語に聞こえるかもしれませんが、ビジネスも投資なので同じ意味合いを持ちます。

つまり、会社はビジネスをするために在庫や機械設備、土地などに投資をします。これらは貸借対照表の左側に書かれています。投資をするためには資金が必要なので、借入金や資本金で資金を調達しますが、これらは右側に書かれています。

ここで、決算書を分析する視点の一つ目として、調達と運用のバランスが良いのが良い財務内容であり、なんかチグハグになってしまっているのが悪い財務内容といいう見方をするんだということを押さえてください。

調達と運用のバランスが良いというのは、長期間にわたって使用しながらリターンを得る予定の運用資産、たとえば工作機械や店舗の内装などに投資するために、長期的に返済すれば良い借入金や、返す必要がない自己資金で賄うことにした場合のことを指します。ゆっくりお金に変わるものへの投資資金は、ゆっくり返せば良いような元手資金でカバーすることで、おちついてお金を動かせば良いなと安心できるからです。

一方チグハグなパターンは、設備などの投資資金を1年以内に返済をしなければならないような借入金でカバーするというイメージです。こうなると、どんどん返済を進めないといけないのに、投資した資産から回収できるお金が少なくて間に合わないということになるから、資金繰りが忙しくて経営リスクが発生します。好んでこういった資金調達をすることはないと思いますが、信用力が低いと短い期間でしかお金を貸してもらえなくて悪循環となり、どんどんチグハグなバランスになってしまいます。

つづく