社員の成長を信じて待てるか

採用した転職組の社員が育たないというご相談を受けました。

社会人経験5年超の割には、仕事の基本から身に付いていない。

具体的には指示事項をメモしないとか、仕事の優先順位が立てられず、客先からの依頼事項を放置して迷惑をかけるとか、教育担当の方から次から次へと至らない点を列挙いただきました。

とにかく面談してやってくれということで、本人の話を聴きました。

わたしは仕事ぶりを見ているわけではないので、今の気持ちや、仕事の悩み、仕事観などを中心に質問を重ねました。

しかし、上司から注意・指導された内容や、会社から示達された目標についての話に終始し、自分の意見や気持ちはほとんど本人の口から聴くことができません。

転職の理由は、ご家族が増えたタイミングで待遇面を考えてのものだったようで、そこだけははっきりとした意見があると感じました。

要するに、給料のため、生活のために働くという仕事観が主で、それ以外のことはあまり深く考えてこなかったということかと。

だから、自分にとってはとても高いレベルの仕事を急に求められてもどうしたら良いかわからない状態に見えました。

会社としては熱い思いを持って仕事に取り組んでほしいと思って指導してきたが、相当な時間を取られるため、指導役の業績が落ちてしまう事態に危機感を感じています。

仕事観は人それぞれですし、給与のために働くのも何ら悪くないです。

しかし、会社が求める人材像とのギャップが大きすぎることと、小規模な組織でそのような人材を抱えていて良いのかという問題があり、そろそろ人事方針を固めなければならない段階に来ています。

しかし、縁があって自社を選んでくれた社員なので、入社したことが本人のプラスになるように指導を続けたいという経営者の方針となりました。

会社が求めるレベルには到達していないようですが、客観的な立場のわたしから見ると、少しずつでも前に進んでいるような感覚もあります。

「状況対応リーダーシップ」によると、部下の成長度に応じて上司の関わり方を変えていく必要があるとされています。

具体的には、転職や異動後は本人にとって新しい仕事であり、頭の中の引き出しには何も入っていないから、まず引き出しに仕事のスキル・知識を詰め込んでやる、ティーチング的な関わり方が必要ということ。

一通り詰め込んだら、そこから引き出せるように質問するコーチング的な関わりも増やしていくといった具合に、指導スタイルを相手の状況に応じて意識的に変化させるという理論です。

指導者の方は、もどかしくて仕方ないのですが、それも成長を期待してのことであり、到達点がいきなり高すぎたようです。

期待しているからこそ、何度も裏切られてガッカリしてしまう。

これが繰り返されてきたので今回の面談に至ったわけです。

皆さんと相談し、当初会社が想定していた到達目標から、本人目線の目標設定に切り替えて、どこまで行けるのかやってみようということになりました。

社員の成長を信じて待とう。

「人を育てるのは時間と労力がかかるね。まさに子育てと同じ!」

成長を待つと決断した経営者はすごいです。

わたしは第三者として過度に期待せずに、でも実は期待しながら本人と真剣勝負で毎月の面談に臨もうと思います。