コンサルタントは思考を止めるな!

コンサル提案のための予備診断をするときには、初見の企業に訪問し、2時間程度の短い時間で本質的な問題を見つけ出すことが求められます。

経営者や、金融機関さん等案件を持ち込んでいただく担当者の方が記入した調査表を事前に拝見すると、企業が抱える問題が書かれているのですが、その問題がそのままその企業の問題であることは稀だと思います。

なぜなら、問題がはっきりしているのならわざわざコンサルタントに依頼する必要がないからです。

問題解決の手順としては、問題発見→原因分析→対策立案という流れになりますが、最初の問題発見の筋が悪いとその後のストーリーがどんどんずれていってしまいます。問題発見のためには、その企業や職場のあるべき姿と現状を明確にする必要があるのですが、現状を早く正確に把握することが難しいのです。

先日うかがった製造業さんで社長さんが開口一番におっしゃったことは「工場が広すぎて、工程間の仕掛品の移動距離が長く、それに1往復10分かかっている時間のムダが気になっている」というものでした。しかし、建屋と機械設備のレイアウトを動かすわけにはいかない実情より、この問題は解決できないものでした。

では、なぜそのように感じているのか?についてヒアリングを進めていくと、繁忙時に2直にせざるを得なかったり、残業が増えてしまい工場の稼働時間が長くなる。エネルギーをたくさん使う工程でもあり、稼働時間が長くなるとエネルギー消費量も膨大になり、脱炭素の世の中の流れと逆行する。さらに、工程間で応受援ができる体制は整っているが、定時に終わらせることができない。といった問題をうかがうことができました。

そして、詳細まではお伝えできないのですが、その原因の一つに、仕掛品を運ぶ直前の工程への作業指示の仕方に問題があるのではないか?という仮説にたどりつきました。

最初にあった社長の問題意識からすると、全く別の問題が発見されたのです。

経営者の言葉の中で、一見すると何の関係もない事柄がいくつか出てくるのですが、それらがどこかでつながっているはずだということ、なぜあのようなことを言われたのか?ということを意識しながら現状を丁寧に確認していくと、本質的な問題にたどりつくということを何度も経験してきました。

自分が腹落ちするまで聴き続けろ!!

「もやもやしたままでヒアリングを終わらせるなんて、私にはできないよ」

9月には中小企業診断士養成課程の診断実習が始まります。

実習生のみなさまが、どの段階で、どこまで本質的な問題にたどりつけるのか楽しみです。

思考停止状態に陥ることなく、常に考え続けられる診断士になっていただけるように、わたしは指導員として見守っていきたいと思っています。