事業承継における借金問題について考えてみよう

製造業の後継者からのご相談。

父親から引き継ぐ会社の借金が大きくて、どうしたら良いかという内容でした。

周りの人からは一旦会社をたたんで、再スタートを切ったらどうかというような助言もあったようです。

決算書を使いながら、たとえば会社を倒産させるとBSに載っている数字の関係者、つまりどの債権者に迷惑がかかるかを説明したうえで、別会社で事業を継続させる場合に何がどのように問題になるかを理解いただく。

利払いを棚上げ、元金優先弁済をしているということで、通常のリスケより一段厳しい状況であることを踏まえつつも、資産がそれほど棄損していないこと、実質債務超過額とコロナ前の収益力の関係を考えると、むしろ返済正常化に向けた道筋も描けるのではないかということをお伝えしました。

借金があること自体が問題視されがちですが、その反対側には必ず資産があり、その資産を使った事業が収益を上げられるのであれば、その借金は返済が可能となってくるため、借金の存在自体が本質的な問題ではない。

むしろ、前向きに事業に取り組んでいる後継者にとっては、過去になんらかの理由で元金優先弁済にまで陥ったリスケが続いていていることと、それで新規の資金調達が困難な状態であることが問題である。

これは先代の経営責任になりますが、後継者の力でその問題を解決できそうなところまで来ている。

しかし、コロナ禍で売上が減少して、収益力が一時的に低迷していることが本質的な問題であり、これは後継者の力で解決できるはずだとご指摘しました。

「やっぱり売上を戻さなければならないということですね!」と前向きに納得されたご様子でした。

会社を引き継ぐ時に借金は先代経営者が作ったものであり、後継者にとって重荷です。

しかし一方で、会社に残された有形無形の資産にも目を向けて、それらが今でも機能しているかどうか、定量、定性両面で把握する必要もある。

この作業をしたあとで、負債と資産とのバランスを見極めれば、単に借金が問題なのではなく、借金の裏にある問題を発見することができるのです。

借金があることが問題じゃない、返済原資が不足することが問題だ!

「ただ、借金返済が事業の目的になるのはイヤですよね。」

今回のご相談では、バブル期に作った工場の土地建物が借金の反対側にあるものでした。

過去に、その工場から生み出される収益が返済原資に回らなかったと思われます。

しかし、後継者さんはとても活動的で、その工場を活用してこれからたくさんの価値を創出することができる方だと感じました。

ぜひ前向きな方向で借金問題を乗り越えていっていただきたいです。