「道は開ける」の実践

16年前に銀行を退職して、中小企業診断士としての仕事を始めましたが、5年間は公的な機関にフルタイムの契約職員の立場でお世話になりました。

複数の公的機関が連携して立ち上げる事業だったので、それぞれ立場が違う人たちとの協業は難しいことも多くありました。

最初のうちは、立ち上げメンバーばかりでしたので、同じ理念のもとにまとまっていました。

しかし、日々忙殺されて時間との戦いだった銀行時代とは全く違う組織文化に戸惑いもありました。

時間休をとってゆっくりと出勤してきてから、日中ぼーっと過ごして、仕事もないのに残業する人がいたり、タバコを吸いに行ってちっとも帰ってこない人がいたり、仕事が山積みなのに必ず定時で帰る人がいたりと。

そういう人たちを見ると、無性に腹がたって仕方がなかったのですが、これは組織の問題なんだと途中で気づきました。

前職時代は全員が一つの目標に向かって仕事をしていたので感じることもなかったのですが、組織の目的や目標、マネジメントのやり方が違うとこんなに人は違う動きをするものなんだと実例で理解することができたのです。

組織が成立するための3つの条件として「コミュニケーション」「協働の意欲」「共通の目標」があり、これらが一定水準必要とされると言われていますが、これはあくまでも民間組織のことなんだと理解することができました。

本当はそうじゃないかもしれませんが、こんな風に客観視して自分に言い聞かせないとやっていられなかったという面もあるのです。

少し時間が経って人が入れ替わっていくと、その人たちが所属する組織の論理が入り込んできて、当初の理念などはどこかへ行ってしまいました。

どこが主導権を握るかとか、情報をわざと止めて、自分の思い通りにものごとを運ぼうとするような動きが横行するなど、つまらないことばかりに振り回されるようになりました。

わたしは、あくまでも当初の理念に共感してその仕事を引き受けたわけですから、この時ばかりは相当悩みました。

こんなバカバカしいことに巻き込まれるために会社を辞めたんじゃないと。

毎日ため息ばかりついていたようで、妻が心配してそのことを指摘してきたときに初めて気付きました。

何かやろうとしても、気力が起こらないのです。今振り返ると心の病になりかけていたのかもしれません。

よくよく考えると、わたしは有期契約でいつか必ずいなくなる人間であり、一方でおかしな動きをした人たちは、ずっとその組織にいるつもりの人なので、考えや行動も分かり合えるはずはないですよね。

悩んでいた頃に、診断士の先輩方にいろいろとお仕事に誘っていただくことがあり、懸命に取り組んでいると、だんだんとコンサルタントとしての自信がついていきました。

やったことがない仕事ばかりなので、当然時間がかかります。

求められる水準の仕事ができるのか不安のあるなかでも、自分ができるレベルで最大限のものを注ぎ込んでやるしかないと、締め切りに異常なストレスを感じながら一晩中机にかじりついていたことを思い出します。

当時は、妻から「ご飯できたよ〜」と呼ばれても、ロクな返事ができないほど追い詰められていました(ごめんなさい)。

しかし、このころから変な悩みがなくなっていきました。

ため息をついている間もなく忙しかったのが良かったのかもしれません。

本来やろうとしていた仕事を与えてくれた先輩方には今でも感謝しかありません。

目の前の現象が悪い方向に進んでいくと、それにこだわって、自分の考えも悪い方向に引きずりこまれそうになります。

私の場合だと、有期限の仕事なのにその職場が全てだと思って、感情が振り回されたこと。

しかし、そんな時こそ自分の可能性を信じて、自分がいる枠から飛び出すことを考えて行動するべきなのではないかと、今では思えます。

そのために「いつでもその準備はできている」という状態に持っていくことに集中する必要があるんだと。

不安なときでも、自分を信じてやりきれ!

悩みって、後から考えると大したことないことが多いですよね。

だから、悩んでも仕方ない。

悩むぐらいならいろいろ動いて忘れましょう。